ディスカバリィ 2008年08月09日

20世紀は、凄まじい科学発展が起こった世紀だった。
量子力学という、原子や分子の振る舞いを記述できる学問が生まれたからだ。

ものごとの仕組みを理解するには、
おおまかに分けて2つある。
やっていくうちにだんだん分かってくる方法と、
理屈を実際に適用していく方法だ。

人間が目で見えるものについては、よく観察すれば原理を理解することも可能だ。
しかし、目で見えないほどの小さいものはどうやって理解すればいいのか?
物質を構成する最小単位は原子や分子だが、
これらがどのような動きをするのかが分からない。

それまでは、物質の性質を理解するのも、
化学反応がどのように進むかというのも、一種の職人芸、
いわば経験論的に得られた知識があっただけだった。

どうして化学反応が起こっているのか。
なぜある物質が特定の性質を持っているのか。
量子力学は、それらの疑問を解決することができた。
今では化学を学んだ高校生なら誰でも知っていることだが、
たった100年前は何にも分かっていなかった。

原子や分子がどのように動いているのか分かれば、
経験論によらずとも人の望みの物性を引き出すことができる。
少なくとも現在では、物質のある特性がどうして生じるのか
完全に答えることができる。

その意味で、20世紀に起きた発展は全て量子力学に依っていると言っても過言ではない。
物質科学において、これ以上のインパクトを持った発見はもうないだろう。


***********


量子論とは直接関係がないが、
特殊相対性理論から導かれる結論のひとつに以下の式がある。
E = mc2 (E:エネルギー、m:質量、c:光速)
有名な式なので、見たことがある人も多いはず。

物質それ自体を消費して、エネルギーに変換することができる。
莫大なエネルギーがあれば、物質を創造することができる。
この式からこれらのことを読み取ることができる。
日本全体の一年間の消費電力は、2.3〜2.4×10^15乗[PJ]ということなので、
たった280kgの物質があるだけで日本のエネルギーをまかなえてしまう計算になる。
1gの物質を分解できれば、車は廃車までガソリンいらずだ。

この物質を構成するエネルギーを取り出して使うのが、原子力発電と原爆だ。
原爆の場合はウランという不安定な物質を用いて、
それを分裂させたときにできる、余った結合エネルギーを爆発に使っている。
そのため理想的に物質を消費した時よりもだいぶ少なくなるが、
その分裂させたときにできるエネルギーだけでも莫大な量だ。

死者には祈りを、
生者には未来を。
今日は9日、長崎に原爆が落とされた日。