無形のもの 2008年04月06日

大学で学べるものは多い。
勉強によって得られるものもあるが、
どちらかと言えばそれ以外の大学生活で得られるもの、
例えば同じ学科の仲間やサークル、バイトその他で得られる
経験や人とのつながりの方が得るところが大きいだろう。
この辺りについては言わずもがなのところだろうし、
多くの人が指摘していることではある。
これが大学に行くことの最大のメリットだ。

では、理系の大学院ではどうだろうか。
どうも世間から見ると、アカデミックな分野というのは
兎角見えづらい場所であるような気がします。
きっと閉鎖的な環境だからなのかな。

うちの学科では三年後期から四年にかけて研究室へ配属になる。
配属というは、それまでのやや広い範囲の専門課程の勉強から、
ごく狭い範囲の、しかし先端(これは優れているという意味ではなく、
誰も行っていない前人未踏の、の意味)の研究に移る。
ここからは勉強、というか学びの質が大きく変わる。

それまでは座学、先生の講義を聞くだけだったけど、
与えられたテーマをもとに自分で課題を見つけ、
分からないことを自分で調べ、時には先輩に相談しながら解を見つける。
(皮肉なことに、ここであれだけつまらなかった学部の授業が役に立つ。)

いろんな側面からの見方があるけれど、ある一面では
この研究室での生活で三種類の人が生まれる。

1つは順当に学ぶ人。
自分で課題を設定し、種々の方法を駆使して
解決(ソリューション)を導くというプロセスを身につけていく。

1つは学ばない人。
これにはやる気の無い人と適性が無い人の2つに分かれる。
研究が面白くない、または他にやることがあってやらない場合と、
課題が見つける力がない、解決法を検討することができない場合がある。
後者の場合というのは勉強がよくできる真面目な人に多い。
こういう人は、指示されたことはそつなくこなすのだが、
非常に受け身というか、考え方の姿勢が違うのだろう。
最初から解があることに関しては非常に強かったりする。

もう一つは研究に価値を見いだす人。
まぁ自分もその一人なのだが、なんらかの理由でやっている研究を
続けてみようと思う人がいる。
それとは別に、上に挙げた勉強がよくできる真面目な人の中でも、
たまに突き抜けて超優秀な人がいることがある。
こういう人は課題の設定と解決の仕方のどちらか、
またはその両方に対して非凡な優秀さを発揮する。本当にごく稀だが。

というわけで、ロジカルなメソッドを身につける上で
大学院の二年間で学べるものは巨大なように思う。
プロジェクト立案型の仕事ならば、二年間の自由な試行錯誤があった分
学部卒や文系の人よりも修士の方が有能たり得るだろう。

こうした能力は口で説明できないし、独力で身につけるのは難しいだろう。
学ぼうとする人の中で、先生や先輩との関わりを通じ自然と培われていく。
もちろん僕自身の内的な思考を言語化して伝えることは可能だろうけど、
おそらくそれを他者が聞いてもイメージすることができないに違いない。

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しかしこの関わる先輩というのが曲者だったりもする。
世間的に見ると、科学者というのはみんな優秀だと思われているのだろう。
しかし、中には就職できなくて残っているような人もいる。
さすがに教授までなるような人だとそうでもないけれど。
研究に価値を見出した人、役立たない人、超優秀な人…
こういう人たちが集まるのを見て、僕は“極端な人間の吹き溜まり”と評している。

そういう人間がたくさんの大学生・大学院生を教えているわけだから、
教育的にはいかがなものかと思いますが…。
まぁ見てる限りにおいては、大抵みんなお利口さんなので
学べるところとそうでないところに見切りをつけている。

その意味において、自分に合った先生、そして先輩に出会えたなら
非常な幸運だと言えるだろう。


W
自分は、研究に適性がないと痛感した大学院生活でした

それに気づけて、就職を変えられたことはよかった。

社会人になってまだ1週間だけど、研究室の人間関係の狭さを痛感しました。

今まで悩んでいたことが、面白いくらい解決する…


気づかぬうちに、閉鎖的な人間になっていたみたいです。



実際、社会では人間の渦の中で生きていかざるを得ないわけで、学術機関で学べることの限度は感じます。

問題発見・解決能力の類はかなり、研究を通して実践的に学べる。

けど、それだけがすべてではないことを忘れないで研究生活に打ち込むこともまた、困難だと思いました。


優秀とかはあるけど、学術的なもんと、社会の中で同じ能力が発揮できるかはまた別なわけで。


沢山の人間と絡めるジェネラルな思考をもち、自分の仕事(に近いもの)に対してスペシャリストである人間が、今は必要なんだと思った。

長文レス、失礼。


k
長文レスは歓迎ですよ☆
むしろこのカタい文章にコメントくれて感謝です。

それにしても社会人羨ましいわ〜
僕はこの環境から一刻も早く抜け出したい所ですが(笑)
研究室とかって人間関係が固定されてしまうから、
一度はまってしまうと抜け出せなくなるよね。
ときどきは客観的な視点を持てる機会が欲しいものです。
息が詰まる時は、場所を変えてみるのがいいもの。

大学と企業の最大の違いは、求める目的にある気がする。
企業はいたってシンプル。
お金をいかに稼ぐか、手持ちのリソースを使って利益の最大値を叩き出すか、
という点に尽きるということ。
もしかすると異論もあるだろうけど、
目的の点で非常に分かりやすくて、しかし一人勝ちも難しい。
人間関係も線引きがきちっとしてソフィスティケイトされているだろうから、
きっとワギも新しい環境と価値観の中で新鮮さを味わっていることでしょう。

研究は主に自己満足と知的好奇心、そして名誉を目的としているから、
ときとして非常に内輪でドロドロしたものに成りやすいね。