Tales from Earthsea 2008年02月29日

ジブリゲド戦記を見ました。
公開された当初は、同時期にやっていた「時をかける少女」と
よく比較されていた気がします。
見た感想としてはまぁまぁってところかな。
評判の悪さほどではないと思いました。
しかし、確かに時をかける少女の方が面白いね。
ゲド戦記は詰め込み過ぎで、何も残らない気がする。

ジブリゲド戦記を作ると聞いたときに、
どんな物語かと思って原作を読んでみました。
そうしたら、どうやらとても有名な作品だったらしく、
知らなかった自分が情けなくなりました。
同じ有名だという理由で、同時期にナルニア国物語も読みました。
(こちらはもう少し低年齢向けですね)

ゲド戦記は、魔法の存在するファンタジー世界の物語です。
この物語の特徴なのは、おそらく僕と同世代の人が想像するような
剣と魔法の派手なファンタジーではないということ。
魔法を使った戦いは一切出てきません。
それどころか、人対人が暴力を持って争うことがないほど。

ゲド戦記は全5巻+外伝1巻。
1〜3巻までが数年で書かれているのに対し、
4巻と5巻はそれぞれが10年以上空けて書かれている。
巻によって主題が大きく異なっているけれど、
取り上げられるテーマそれぞれがものすごく重い。
この作者が描き出すのは、
・自分自身の“影”、つまり闇との戦い
・黒人と白人との差別の問題
・自分自身という桎梏からの解放
・生と死、そして不死
・男と女
・弱者を苦しめる強者
・世界の変革、変わる時代
といったような、現代世界が抱える深刻な問題だ。
特に、4巻と5巻はあまりファンタジーの感じがしない。
1〜3巻までで一応は完結と思っていいと思う。

ジブリゲド戦記は、基本的には3巻の話をベースとしつつ、
それぞれの巻の部分をつまみ食い、と言った所だろうか。
見て思ったのは、もの凄く絵が綺麗だということ。
そして音楽のクオリティも高い。
内容は、初監督の作品にしては悪くない、少なくとも、
ネットで評されているほど悪くはないと僕は感じた。

しかし、原作を読んだ自分としては、
これをゲド戦記と呼ぶことをためらう。
原作があるものを映像化する場合、手法としては主に2つあって、
1つが作品を忠実に映像化すること、
もう1つは主題を読み取って、それを別の形で再現すること
があると思う。
この映画は、そのどちらにも失敗している。
ストーリーも、主題も、大きく外してると思わざるを得ない。
もし行うのであれば、例えば1巻の「影との戦い」を
そのまま再現するのが一番良かったと思う。
(余談だが、どれか1冊を選べと言われたら間違いなく1巻だ)
もしくは、日本が現在抱えている問題を、
ル=グウィン(原作者)ならどう捉えるかと言う視点で
物語を再構成する必要があったように思われる。

それぞれの登場人物について言えば、
一人一人の背景描写がなさ過ぎて、どの人物も思い入れしにくかったし。
原作を知っている人でないと、よく分からないだろうなぁ。

(おそらく主人公の)アレンが抱える不安というものは、
現代社会で生きる自分たちにとっても共通するところがあると思う。
その展開の仕方については、これがこの監督独自のものなのだろう。
なんでこれをオリジナルで作らなかったのかが、
どちらかと言えば悔やまれる所ではあるかな。<<前の日記へ kei+の日記一覧へ 次の日記へ>>
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のすけ 2008年03月01日 02:46 自分はまだゲド戦記は見たことも読んだことも無いです
原作は結構な長編だったんですね
魔法が無いファンタジーというのは、逆にリアリティがあって好きですね。(そーいえば「デルフィニア」もリィが介入してこなければ基本的には魔法は存在しないファンタジーですよね、人間死ぬときゃ死ぬみたいな。)
原作がそれなりに長編だと映像化したときに詰め込んだり端折ったりな部分があるので、名作になるか愚作になるかは紙一重だと思います
ブレイブストーリー」も原作を読んだ人にとっては100%満足のいく映画ではなかったという感想が多かったような…。
(こちらも原作&映画ともにまだ見たことがないのですが)
むしろ原作無しで凄い映像作品を作ってほしいところですけどね、最近は原作付き作品が主流になってしまっているので…。 kei+ 2008年03月02日 02:45 ブレイブストーリーは原作面白かったですよ。
主人公の成長が主題となっているところが好きです。
デルフィニアの場合、魔法は反則技ですよね。
まぁリィの存在自体がそう言えなくもないですが…超人過ぎ。

映画の場合2〜3時間という制限があるので、
その中で全て表現するのは難しいのかもしれませんねぇ。
最近みた中だと、どろろなんかはかなり良かったです。
原作自体も面白いのに加え、映像として表現されているものも
良くできていると思いました。
そういえばNANAなんかも評判になっていたので、
いつか見てみたいところです。
原作があるものを作った方が商業的に成功しやすいのかもしれませんが、
やはりオリジナルで挑戦して欲しいところはありますね。
まぁ、映画の場合は文学から映像化されるものも多いので、
そういう意味では普通のことかもしれません。