Like singin' a song 2006年11月11日
このような言葉とともに、英雄たちの叙事詩を語りだすのは、なんと敬虔的で心そそられることだろう。
「アイギス持つゼウスの姫君、
オリュンポスに住まい給うムーサらよ、
今こそわたくしに語り給え、
わたくしをしてかの男の物語を語らせ給え。
御身らは神にましまし、
事あるごとにその場にあって
すべてご承知であるのに、
われらはただ伝え聞くのみで、
なにごとも弁えぬものなれば―――」
ホメロスのイリアス・オデュッセイア。
トロイアの王子パリスがスパルタ王メネラオスの妃ヘレネを奪い去った事に端を発するトロイア戦争を描いた一大叙事詩環。
古代の詩人たちは、口承でこれを歌い上げ、語り継いでいった。
歌を歌うとき、文章を書くとき、まるで自分の中に何か強い力が生まれ、それに突き動かされるように感じる時がある。
人はそれを霊感と呼んだり、神がかると言ったりするが、そのような瞬間はなかなか訪れないものだ。
そう、僕も僕が書く文章はそのままではただの言葉の羅列でしかないと思う。そこに命を吹き込んでくれるもの、僕自身を言葉に乗り移らせてくれるものは、どこからやってくるのだろう?