どうしてもそれを表現せずには

100年ほど昔、ドイツに詩人を目指す人がいました。
出版社に作品を送り続けましたが、作品は認められず、
他人の作品の方がずっとよく見えてきます。
自信をなくしたその人は、自作の詩を、
著名な詩人であるリルケに送り、その評価を求めました。

リルケは返事をくれました。
「いちばんやってはいけないことーーー
それは他人の評価に一喜一憂することです」
と手紙には書かれていました。
そして、
「自分自身に問うべきことは、書くことを拒まれたならば、
あなたは死ななければならないかどうかです。
書かなくても生きていけるということを感じるならば、
もうそれだけで詩人になる資格はない」
と。


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それでしか、私にはわたしの〈いのち〉を表現することができない!
それがなくては、私は私でいることができない!
私は、どうしてもそれを表現せずにはいられない!

そうしたものが、僕の中にはある。
しかし、思いを伝えずにはいられない!表現せずにはいられない!
という気持ちはあなたにも、他の人にも、誰にでもある。
そしてあなたは現にそれをしている。
その意味で僕も、あなたも詩人なのだ。

ぼくにとっては絵を描くことも、文章を書くことも、
全てせずにはいられない伝えたい思いの発露だ。
これを見るあなたに届け!と常に思いながら書いている。


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僕の思いの不幸の上に、
あなたのしあわせ 成り立つならば
いかにこの世は 不条理だろう
僕がどれだけ 思うとも

君の便りは一度きり
きみのことばは嘘だから
たまに思い出すのもいいだろう
そんなこととも 知らずにね


(2006.01)